TOEIC 単語の覚え方 — 覚える日より、戻ってくる日の設計
「TOEIC 単語 覚え方」で検索する人の多くは、すでに単語帳を一冊持っていて、一度は始めている。並んでいる記事は語源、連想、書いて覚える、アプリと、どれも最初の一回を速くする技術の話が主だ。この記事はその優劣を書かない。TOEICの勉強が途切れる場所は、選び方でも覚え方でもなく、復習のほうだからだ。スコアを履歴書に書く試験では、覚えた日の技術より、忘れた語が戻ってくる日の設計を先に決める。その立場で、頻出語彙をカード化する流れに落として書く。
TOEICは一周で終わらない試験だ
TOEICは、学校の試験とは違う場所で使う。スコアを履歴書に書く。就職、転職、社内の基準のために受ける人が多い。日程も自分で選んで申し込む。つまり語彙の勉強は「範囲を一周する」ことではなく「試験日の朝まで保持する」こと自体が目的になる。一周した時点で、何も終わっていない。
語彙の内容も、この試験の用途に沿って固定されている。会議、日程の調整、通知、契約、顧客対応。ビジネス文脈の語彙が中心で、日常英語の延長にある事務的な語が多い。そして事務的な語は多義が主戦場になる。issueは発行でも議題でも課題でもあり、orderは注文でも順序でも指示でもある。単語帳の一行で覚えた「issue=問題」と、試験の文の中で問われる意味は、簡単にずれる。このずれは覚え方の工夫では埋まらない。埋まるのは、取りそこねた意味を、出会った文ごと覚える作業のほうだ。
覚え方の流派が届く場所と届かない場所
どの覚え方にも強い場所はある。整理するとこうなる。
| 覚え方 | 届く場所 | 届かない場所 |
|---|---|---|
| 語根・語源 | 初見の語の推測が速くなる | 多義語のどの意味が問われるかは教えない |
| 連想・イメージ | 初回の記憶は残りやすい | 思い出す経路がイメージに固定される |
| 書いて覚える | 手を動かした分、初回は定着する | 時間がかかり、枚数が増えると復習まで回らない |
| 単語帳の通読 | 全体の括りと頻出の感触が掴める | 読むことと思い出すことは別の作業 |
どの行も「最初の一回」の話だ。スコアに関わるのは試験日までに何枚の語が何度戻ってきたかで、この仕事を引き受けている流派はない。
途切れるのは復習で、選び方ではない
単語帳を一周する計画には構造的な無理がある。進んだ分だけ、忘れた分が後ろに積もる。二周目に入る頃には一周目の前半が薄くなっていて、そこで「覚え方が合わなかった」と別の単語帳、別の覚え方に替わる。選び直しがもう一周する。実際に壊れていたのは選び方ではなく、忘れた語だけを拾って戻す仕組みのほうだ。
数は例として置く。手元の単語帳の見出しが2000語で、知らないのが3割なら最初のデッキは600枚。1日の新しいカードを20枚にすれば新しい語は一か月で終わり、そのあとは復習だけの日が続く。あくまで例で、自分の語彙数と一日の時間で計算は変わる。言いたいのは分量ではなく、復習だけの日が一番長いという構造のほうだ。
実際の流れ
私たちはこの流れを作っている側(Piccard)にいるので、その道具で書く。頻出語彙をカードにする入口は三つある。カードの作り方そのもの、紙とエクセルとアプリの比較はカードの作り方の話に譲って、ここではTOEICの語彙に絞る。
資料・単語帳をアップロードして候補から選ぶ。 手持ちのPDFや配布資料を打ち込み直さずアップロードすると、単語・意味・例文の入った候補が並ぶ。知らないものだけ選んで保存する。一度に保存できるのは20枚までで、この制限が初日の分量を代わりに決めてくれる。頻出順のリストは前半に知っている語が固まっている。最初の仕事は覚えることではなく、濾すことだ。
問題文・公式問題集の文から、文ごと保存する。 演習で引っかかった語は、リストより先にその日のカードにする。多義語は取りそこねた意味のほうを表面に置く。issueを議題で取りそこねたのなら「issue=議題」がカードで、出会った文が例文として残る。復習のとき、その語をどの文脈で間違えたかが一緒に戻ってくる。
字幕のある動画から。 リスニングで語彙を落とす典型的な形は、目で知っている語を耳で取りそこねることだ。読む資料ではこの練習ができない。Piccardの拡張を付けた字幕のある動画では、クリックしたその行だけがカードになる候補として届く。動画全体をまとめてカードにする機能ではない。聞き取れなかった一行を拾う道具だ。ビジネスの話題を扱う動画がこの材料に向く。単語を観ているものから集める流れの詳細はYouTubeで英単語を覚える方法にあって、観る時間を学習として組み立てる話はYouTube 英語学習を成果に変える方法が近い。
復習はFSRSが計算する
デッキが育つと、次の問題が来る。何を、いつ、戻すか。単語帳の周回方式は、全部の語に同じ間隔を与える。語ごとに忘れ方は違うのに。
Piccardの復習はFSRS-6が計算する。カードごとに忘れる頃合いを推定して、その日の分だけを並べる。評価は四段階(もう一度/難しい/普通/簡単)で、難しいと答えたカードは間隔が縮み、簡単と答えたカードは間隔が開く。いつ忘れるかの見当は忘却曲線の観測に、間隔をどう伸ばすかは間隔反復の研究に、それぞれ根拠がある。
試験日が決まっている勉強では、もう一つだけ設計が要る。新しいカードは試験の二、三週間前で止める。それ以降は戻ってきた分だけを処理して、直前の期間はよく間違えるカードに時間を使う。その「よく間違える」リストは、ノートにまとめ直すものではなく、評価の履歴からすでにできている。
この方法が合わない時
試験まで数日しかないなら、いまからカードを作らないほうがいい。手持ちの単語帳を二周して当日を待つほうがましだ。目標のスコアが高い帯にあるなら、頻出のリストは材料として薄い。その帯の語彙はリストではなく、演習で出会って集めるしかない。紙の単語帳で周回が回っているなら道具を替える必要はない。回っている復習を壊すのは損だ。書いておくと、Piccardの字幕クリックが使うのはYouTubeだけで、Netflixなどには対応していない。
費用
Piccardは開始時に150エネルギーが付く。カード1枚で1エネルギーなので、150枚ぶん。そのあとは$5/$10/$20のチャージ制で、サブスクリプションではなく、チャージ分に期限はない。料金はサイトで確認できる。
はじめかた
PiccardをChromeに追加する。最初の一手はどれか一つでいい。手持ちの単語帳をアップロードして、知らない語を20枚選ぶ。今日解いた演習から、引っかかった語を文ごと保存する。翌日から復習の分が届き始める。そこから先は覚え方の心配ではなく、分量の調整だけが残る。
(カードを紙とアプリのどちらで作るかは英単語カードの作り方で、観ている動画から単語を集める流れはYouTubeで英単語を覚える方法で書いています。リスニングから話す練習まで含めた独学全体の組み立ては、YouTube 英会話の独学方法でまとめています。)
記事一覧はPiccardブログ。
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