シス単 アプリ — 見出し語の一覧を、復習が回るデッキに替える

「シス単 アプリ」で検索する人の手元には、たいていもう一冊、システム英単語(通称シス単)がある。カバンに入れて持ち歩くのが重い、通読が単調で三周目に入らない、すき間時間で復習したい — そういう理由で「この一覧をアプリに移せないか」と探している。この要求そのものは正しい。一覧はもう手元にあって、足りていないのは覚え方ではなく、復習の仕組みのほうだからだ。

先に線を引いておく。この記事はシス単の特定の版の構成や良し悪しを扱わない。Piccardはシス単の公式アプリではなく、出版元とも提携していない。ここで書くのは作業が一つだけだ。手元の単語集の見出し語の一覧を、復習が回るカードの山に替える流れ。単語集を悪く言う記事ではない。むしろ前提は、その一覧が入試に対する材料としてよくできていることのほうにある。

単語集は読む計画として組まれている

版が変われば構成も変わるが、この種の大学受験の単語集が共通してやっている仕事は、三つに纏まる。

一日分の分割。 大きな一覧をDayやUnitに割る。これは本の側が作った進度表で、読む人の速度も試験日も知らない。Dayは本の時間割であって、自分の時間割ではない。

頻出順の並び。 よく出る語が前に来る。入試の傾向に基づいて編まれた一覧は、材料として機能する。ただ、頻出は試験についての情報であって、自分についての情報ではない。前の頁ほどすでに知っている割合が高いので、最初の頁は速く過ぎる。

並べた意味。 一語に意味を並べ、関連する語や句を横に置く。引いて確認するには最適の形だ。

三つとも「今日どこまで読むか」には答える。答えない問いが一つある。昨日何を忘れたか。単語集が最後まで回るのか、どこかで崩れるのかは、この二つ目の問いのほうで決まる。

読み返すことと思い出すことは、別の作業だ

本を最後まで回す人の方法は、ほぼ決まっている。マークした語を読み返す。集まった語で二周目に入る。ここには一つの錯覚が敷いてある。読み返した語は、あとで使える語だと信じること。頁を開いた瞬間に意味が目に入っているのは、取り出しているのではなく、判別しているだけだ。入試の長文で必要な動作は逆方向だ。文を読んでいて語に会ったとき、記憶の側から意味を取り出す。本は開けない。同じ時間をかけるなら、自分で取り出す練習のほうが記憶を長く残すという結果は、テスティング効果の研究に積まれている。

マークの正体もここにある。マークは「もう一度見るもの」の印であって、「もう一度見る頃合い」の知らせではない。いつ見るべきかをマークは知らないし、その情報は本のどこにも書かれていない。紙には日程表がない。

濾す作業が周回の大きさを決める

単語集を最初に通す行為は、覚えることではなく濾すことだ。数は例として置く。手元の単語集の見出し語が2,000語で、知らないのが3割なら、残るのは600枚。一日に新しく作るカードを20枚までにすれば、新しい語は一か月で終わる。濾さずに一覧全体をカードにすれば2,000枚だ。まだ一枚も覚えていない時点で、道は三倍以上になっている。頻出順に編まれた単語集ほど前半に「すでに知っている」語が固まっているので、この3割はふつうもっと小さい。あくまで例で、自分の語彙と一日の時間で計算は変わる。言いたいのは構造のほうだ。周回の大きさを決めるのは覚え方ではなく、濾し方のほうにある。試験の種類が変わっても「一覧は材料で、濾すのは自分」という構造は同じで、級ごとの語彙範囲を同じ骨格で扱った話は英検 単語の覚え方にある。

変換:単語集からデッキへ

私たちはこの流れを作っている側(Piccard)にいるので、その道具で書く。入口は三つある。カードの作り方そのもの、紙とエクセルとアプリの比較はカードの作り方の話に譲って、ここでは手元の単語集に絞る。

単語集を上げて、候補から濾す。 手持ちの単語集や配布資料は、打ち込み直さずにそのままアップロードする。単語・意味・例文の入った候補が、優先順位付きのリストで並ぶ。私たちが単語集のPDFでこの流れを回すとき、最初の確定で選ぶのは知らない語だけだ。頻出順の前半は知っている語が固まっているので、私たちが回した範囲では、数ページ分を上げても残るのは数枚から20枚までの幅に収まった。全部選ぶことも、一部だけ選ぶこともできて、一度に確定できるのは20枚まで。この制限が一日の分量を代わりに決めてくれる。手でカードを作るときに払っていた作業 — 辞書を引く、例文を書く、発音を確認する — がこの段階で済む。最初の仕事は覚えることではなく、濾すことだ。

過去問で会った語が優先。 単語集を回していても、過去問や共通テストの演習で知らない語に会ったら、その日の一枚目はそっちだ。引っかかった文を短く貼ると、カードの候補が自動で立つ。採点のあとの数分で、その日のカードができる。入試が実際に狙う場所は意味のずれで、addressは住所でも演説でもあり、surveyは調査でも測量でもある。取りそこねた意味のほうを表面に置くと、出会った文が例文として残る。復習のとき、どの文脈で間違えたかが一緒に戻ってくる。

字幕のある動画から。 リスニングで語彙を落とす典型は、目で知っている語を耳で取りそこねる形だ。読む単語集ではこの練習ができない。Piccardの拡張を付けた字幕のある動画では、クリックしたその行だけが、カードになる候補として届く。動画全体をまとめてカードにする機能ではない。聞き取れなかった一行を拾う道具だ。カードはその行の位置を覚えていて、復習のときに同じ場面から再生される。ニュースや講義の動画は、共通テストのリスニングの材料としてこの用途に合う。

復習の日程はFSRS-6が計算する

保存が終わると、残るのは管理の問題だ。何を、いつ、戻すか。紙の単語集がこの問いに答える手段は、マークと周回の印しかない。Piccardでは、カードごとに忘れる頃合いを推定して、その日の分だけを並べる。日程を計算しているのはFSRS-6で、評価は四段階(もう一度/難しい/普通/簡単)。難しいと答えたカードは間隔が縮み、簡単と答えたカードは間隔が開く。何をいつ戻すかの見当は、忘れる速さを測った忘却曲線の観測と、間隔の伸ばし方を調べた間隔反復の研究とが、それぞれ下支えしている。単語集では「何周目の何Unitか」で管理していたものが、ここでは「この語を何回間違えたか」で管理される。

試験日から逆算する

Dayは前から数える単位で、試験の計画は後ろから数えるものだ。共通テストや二次試験の日程が決まったら、日付のほうを先に固定する。新しいカードは試験の二、三週間前で止める。それ以降は、その日に戻ってきた分だけを処理する。直前の一週間は、よく間違えるカードにだけ時間を使う。その「よく間違える」一覧を、紙の時代には試験の前夜に手で作っていた。ここでは評価の履歴から、もうできている。

この方法が合わない時

試験が二週間を切っているなら、いまからデッキを新しく作らないほうがいい。その時間で手持ちの単語集を二周して、当日を待つほうがましだ。すでにシス単で周回が回っていて、点が伸びている最中なら、道具を替える理由はない。この記事は、周回が崩れた人のものだ。電子版を持っているからといって、本全体の変換ができるわけでもない。上げるのは今日の分だけで、残すのは知らない語だけだ。一度に20枚までという制限はそのまま届く。書いておくと、Piccardの字幕クリックが使うのはYouTubeだけで、Netflixなどには対応していない。

費用

Piccardは開始時に150エネルギーが付く。カード1枚で1エネルギーなので、150枚ぶん。そのあとは$5/$10/$20のチャージ制で、サブスクリプションではなく、チャージ分に期限はない。料金はサイトで確認できる。

はじめかた

PiccardをChromeに追加する。今日見るUnitの頁をそのまま上げて、候補から知らない語だけを20枚以内で選んで保存する。翌日から復習の分が届き始める。単語集は材料として手元に残って、そこから濾したデッキが周回を代わりに回す。アプリを探していた理由が「復習を回したい」だったなら、始める場所はそこだ。


(単語帳の選び方や紙とアプリのどちらでカードを作るかは英単語カードの作り方で、TOEICの頻出語彙を同じ流れで扱う話はTOEIC 単語の覚え方で、級ごとの語彙を累積で持つ話は英検 単語の覚え方で書いています。)

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